生牡蠣パーティ
けっこう前ですが、目下話題沸騰中の生ガキパーティをやってみました。
このご時勢、生ガキといったらノロウィルスなわけです。警戒心が強い。
「殻付きの生ガキを買ってすぐ食べよう!」 なんて友達を誘うのは、「今度の日曜日、空いてる? ワゴンカーで練炭持って山ん中行くんだけど、ネットで知り合った友達も一緒だよ!」と言うのとほぼ同じですよね。
同じなのは分かってるんですが、僕は生ガキ大好きなんです。なんといっても、海のミルクですからね。…海のミルク。母乳ですよ? 神様は人々に、大人になっても母乳を飲む機会を与えてくださっているのです。
それを生で食べたいと思うのは実に自然な発想です。ところがルームシェアのづけし君は「嫌だ」と言いました。づけし君は生ガキの何たるかが、まるでイマジンできていない。世田谷線松原駅の前にある創作料理屋「居間人」に行ってイマジンの何たるかを学ぶ必要があります。(※註 今は松原駅には居間人はありません、東松原駅にはありますが)。
ほかの賢者たちは「ウェルカム! ハッピーノロウィルス!」という具合でしたので、でも一応づけしも数えて5人分の生ガキを買いに、下高井戸市場の活気のある魚屋に行きました。そしたらトレイに沈んでました、殻付きの生ガキが。一個130円。それ、けっこう安いと思う。
「生ガキくださ〜い」
「…あんた、南海キャンディーズの山ちゃんかい?」
はい来た! また言われた! ああ似てますよ。そういえば前、高円寺の眼鏡屋で赤い縁眼鏡を手に取ったときも、少しまわりがざわついた! …でもまあ、そういう声かけは、親しみやすくてよいですよね。
人数分買おうとして
「生ガキって、一度に何個も食べるもんじゃないですよね?」
と聞いてみたら、
「お客さん、生ガキってのはねぇ、1個じゃ足りないんだよ。1個じゃね…あれ? もう終わり?って思うんだ。でもね、3個じゃ多いんだよ。ちょうどいいのは2個だよ、2個。お客さん、2個がいいよ」
いま思えば完全に乗せられているんですが、そのときは「この魚屋は何て素晴らしいことを言うんだろう」と思い、「じゃ、2個ずつで」と合計10個買いました。3個じゃ多いっていうのがうまいよなぁ。
しかしそのカキの大きさも、相当でかいのです。10個揃うと、何の買い物してるか分からない感じです。これが永福町の、しがない賃貸アパートに持ち込まれると、ヴィジュアル的に実に奇妙で、少々混乱します。
で、生ガキを目の前にすると、もう食うことしか考えられません。ノロウィルスっていう単語は少し浮かぶけど、まぁ考えなかったことにして、とにかくちゅるりといくわけです。いや〜、うんまいよね。なんていうか、潮の味だよね。な〜んもかけずにそのままテロっと食べるのがいいよね。
味覚というのは不思議なもので、僕は生ガキ、小さい頃は嫌いでした。育ちは広島県ということで日本一のカキの産地なわけで、勿体ないことをしました。やはり、どうしても、気持ち悪かった。それに加えて、最初が「キ」から始まって、4文字で、最後が「マ」で終わる宝物を連想させて、かじってるとき痛々しいというのもあった。
宮島で2月に、カキ無料で食べ放題というお祭りがあり、毎年親に連れて行ってもらってたのですが、あれは苦痛でしょうがありませんでした。そんなカキ嫌いの子どもはいっぱいいるようで、そんな子どものために主催者側も「座って乗れるミニ機関車」を用意してくれていて、僕はずっとそれに乗っていました。僕にとっては、生ガキ≒座って乗れるミニ機関車でもあったわけです。
それが大人になると味覚も変わるものですね。今や、誇張でなく世界一好きな食材だと思います。
ちなみにノロにはかかりませんでした。