keisukeoosato.net

2006.11.13

美しい国へ

美しい国へ (文春新書)

今更だけれども、安倍晋三さんの『美しい国へ』を読んだ。

とりあえず、これが新書ということに、違和感を覚えた。これが自民党のマニフェストだったら、なんとも思わなかったと思うんだけれど…。読みながら妙に、「新書らしさ」について考えてしまった。

僕は新書が好きだから思うけれど、新書というのは、やはりエリアの狭い対象について、それもなるたけマイナーな事柄について、その筋の専門家と言われる人が、多少むなしくても熱心に語りかけるもの、というイメージがある。

だから、『路面電車ルネッサンス』とか『地域通貨』とか『肉食の思想』とか、そういう本を読むと、ああ、新書を読んだなぁという気がするのである。

ところが『美しい国へ』は、なんだか新書というデザインに包まれた、全然違うものを読んでいるような気になる。それはやはり、新書というメディアが政治プロパガンダに利用されているということに対する違和感なんだろう。だからこういう形の書籍を小沢一郎が出しても、福島瑞穂が出しても、同じように感じただろうと思う。

だからこの本のタイトルが例えば、『保守とは何か』とか、『いま安全保障を問い直す』とか、『愛国心は美しい』とかで、内容もそれに準じたものだったら、そのへんの違和感も感じずに読めた気がする。結局『美しい国へ』が最終的に言いたいことは、「…ということで、自民党に一票お願い!安倍内閣信任ヨロシク!」ということなんだと思う。それは新書で発するべきメッセージなのかどうか、僕は疑問に思う。

たぶん内容的にはごくフツーのことを主張しているんだと思うけれども、そのあたりの違和感が、とにかく読んでいて邪魔だった。彼も言いたいことをオブラートに包みすぎなのではなかろうか。僕は彼が本当のところ何を考えているのか、より詳しく知りたかった…。しかしこの本はそれを知るには、少々不十分だったように思った。やはり内容が散漫だったんじゃなかろうか。カテゴリーをしぼって複数冊出したほうが良い気がする。