ベンダ・ビリリ!
ルノー・バレ&フローラン・ドラテュライ監督の『ベンダ・ビリリ!〜 もう一つのキンシャサの奇跡』。
アフリカの国・コンゴ民主共和国の首都・キンシャサの路上生活者たちが結成したバンド「スタッフ・ベンダ・ビリリ」。彼らの音楽がアフリカを出て、ヨーロッパ進出を果たすまでのドキュメンタリー。彼らは戦争の影響なのか、足が無くて車椅子に乗っていたり、松葉杖をついていたりという人たちばかりだけれども、壊れかけの楽器で演奏するその音楽がとても陽気で、聴いているだけで体が動く感じ。さながら、アフリカ版「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」である。
ドキュメント自体が何か目新しいということではなかったけれども、この「ベンダ・ビリリ」のメンバーたちがとても良いし、彼らが暮らすアフリカの貧しい環境もきちんと描かれている。音楽は一見とても明るいんだけれども、字幕で出てくる歌詞を眺めると、悲しい歌だったりする。けれども、これはアフリカの国民性なのか、暗いことを歌っていても、必ず光が射す方向へ持っていくような展開なのが良い。戦争かなにかの影響で、川を隔てて別々に暮らすことになった兄妹の歌でも、さんざん貧しい境遇を歌った後に、「誰にでもツイてる日はあって、今日はアイツの番、明後日は妹の番なのかもしれないよ、だから生きよう」みたいな感じなのだ。ベンダ・ビリリのメンバー自体も、スタジオ録音中に保護施設が火事になってしまったり、色々大変なことはいっぱいあるんだけれども、どこか楽天的で前向きで、その生き様自体が音楽に反映されているのだろう。
このバンドのリーダーのおじさんが、すごく父性を持っていて、色々なストリートチルドレンの親代わりになっている。知性と品性も併せ持っていて、音楽をしながら、子どもたちに教育をしているのだ。その中でも、不思議な自作楽器を弾く少年ロジェとの関わりがすごく素敵だ。この映画は、ロジェが14歳のときに、リーダーに拾われるところから始まって、それからヨーロッパ進出までの5年の間、撮影されているのだけれども、これは言ってみればロジェの成長物語でもある。この作品の中で、ロジェは演奏家としても、人間としても、どんどん大人になっていく。映画の冒頭では少々不快だった音色が、途中からどんどん良い音になっていくのが、目に見えて分かる。フランスの音楽祭で、大観衆の中で陶酔したように寝そべって楽器を弾く彼の姿は、ストリートチルドレンというよりは、アーティストだった。そういう風に育て上げた、バンドのリーダーが、やっぱりとっても格好よいなーと感じた。