世田谷ボロ市
先月、相当に酔っぱらった日があった。経堂のタナカームでギネスやごりょんさんなどを飲んだ後、太田尻家に一日で2回入るという意味の分からないことをして、鬼火を全部で4杯以上飲んだんだと思う。よく分からなくなって、よく分からなくなっている自分に嫌気が差しているときに、同じカウンターにいたタカマツさんに、世田谷ボロ市のお手伝いを誘われたみたいだった。翌日あらためて確認すると、本当に誘われていたことが分かった。なんだか分からないけれど嬉しかった。
その世田谷ボロ市の日というのが今月の15日と16日だった。400年以上も続いているのだとか。400年前というと徳川さんが大統領になるかならないかという時代だ。世田谷線の上町とか世田谷といったあたりは、なんだか不思議な雰囲気だなあと思っていたけれど、深い歴史のある街だったんだなと思うと、なぜか合点がいく。なぜ、そんな街が、新宿や品川のように発展しなかったんだろうとは思うけれど、しなくて良かったから、そのことは考えない。
ボロ市というのは、そもそも古着、古道具、農産物なんかを売るイベントで、全国を渡り歩いているそういう専門の売り手(香具師というらしい)が、一同に会するというものだったらしい。その名残はあって、餅つきの道具だけを売っている人とか、牛革だけ売っている人なんかがいたりして、ふつうのフリマとはちょっと違う。それでも昔、画材屋さんのお手伝いとして出店していたという太田尻家のタジリさんに言わせると「昔に比べるといまはフリマっぽくなってきた」らしいけれど。昔はどんな感じだったんだろう。
僕は冒頭のタカマツさんが経営しているトランクというお店のお手伝いをすることになった。ふだんは自転車と、輸入雑貨などを扱っているお店だが、この日はボロ市に合わせてホットワインも出すという。このホットワインがおいしい。「お手伝いはフリードリンク制」という素敵な制度にしたがって、たくさん飲んだ。ぼうっとタバコを吸いながら、ボロ市通りを歩く人たちを眺めているのが楽しかった。年齢層などバラバラだが、みんなどこか、似ているところがある。ユザワヤの客層に近いのかなと思った。みんな何かしら、”作って”いそうだな、という感じ。
接客などしたことがないし、そもそも僕はコミュニケーションに関してナイーブすぎる。でもなにかひとつやってみようと思って、なんとなく慣れてきた2日目の夕方に、たまたま目の前にあったフランス製のブランケットと、チェコ製のカバンを売ってみようと思った。それが気になっている人の話を聞いたり、うなずいたり、一緒に考えたりしていたら、買ってくれた。なんだかそういうのって嬉しいなと思った。
来月1月15日、16日もボロ市が開催されるみたい。僕もまたお手伝いに行く予定なので、街の人を眺めたいと思う。ホットワインは飲む価値あると思います。あとトランクの店長はクゥというワンちゃんです。王監督とは関係ないです。