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2010.2.16 日常日記

味噌づくり

味噌を作ることになった。きっかけは、太田尻家で、皆で味噌を作りたいという話で盛り上がったからだ。味噌は大豆からできる、だったら同じく大豆からできる豆腐や湯葉、おからなんかも一緒に作りながら、真っ昼間からビールでも飲んでほろ酔い気分でお味噌でも作ったら楽しいんじゃない? という感じでトントン拍子に話はまとまって、いざ決行となった。

意外と、身の回りのものが、どのように作られているかを知らない。星新一の『高度な文明』という話のなかに「君に一本のマッチが作れるか? 僕も時計の修理ひとつできない。」という言葉があるけれど、それは食材に関してもそうだ。砂糖、塩、酢、醤油、味噌の「さしすせそ」のなかで、ひとつたりとも自分で作れるものが無い。味噌はどうやって作るのかを調べたところ、やわらかくした大豆に麹と塩を混ぜて、発酵させたらできるのだそうだ。そう聞いても、今いち想像がつかない。

大豆はタジリさん、麹は、今回の味噌づくりを指揮するオクダさんが用意して、他のメンバーは好きな味の塩を持ってくれば良いということになった。好きな塩と言われても、塩の好き嫌いを考えたことがない。僕はスタンダードに「伯方の塩」を持っていった。

味噌の作り方に関しては、以下の動画をご参考にしていただければ。これは池田屋醸造という麹を売っているサイトなのだが、今回使用した米麹、麦麹もここから取り寄せた。

味噌用の大豆を柔らかくするのに時間がかかったので、最初に手をつけたのは豆腐&おから&湯葉。徹底的に大豆をつぶし、それをあたため、布で漉して、力一杯絞る。絞りきった固形がおからで、残りの汁が湯葉と豆腐になる。できあがったおからを、すぐにタジリさんが調理。椎茸の出汁が効いていて美味しい。

おからを食べている間に、さきほどの残り汁をぐつぐつ煮る。このとき湯葉ができるらしいのだが、うっかり忘れて、にがりを入れてしまった。にがりを入れることによって、汁が分離されて、豆腐ができあがるらしい。原理はよく分からないけれど、とにかくいつの間にか豆腐はできあがっていた。最初は青臭い茎のような味がした大豆が、これといった味付けをせず、にがりを入れて煮ただけで最終的に豆腐の味になっているのだから不思議だ。そして、豆腐とは豆が腐るという字だが、どこにも”腐る”という行程が無いのも、重ねて不思議なことだった。

さて、この豆腐を色んな食べ方で食べてみる。今回は参加者がそれぞれ色々な塩を持って来ていたので、それぞれかけてみて、塩味の違いを楽しんだ。一言で塩と言ってもしょっぱさ、ほのかな甘みや苦み、香り、といったところでけっこう味が違う。なるほど、塩にも好き嫌いというものがあるのだ。直に食べて美味しい塩、豆腐につけて美味しい塩などなどと、用途によっても相性などあるんだろうと思った。

予想以上の出来だった豆腐、おからに舌鼓を打ちながら、いよいよ味噌づくりに着手。大豆を相当煮込んで、それを徹底的につぶす。ぐりぐりとつぶして、これに塩と麹を混ぜる。麹というのは、米やら麦やらを蒸して、それに麹菌という菌を繁殖させたものらしい。匂いを嗅いでみると、とてもこれを口に入れるというような匂いではない。なんの匂いかしばらく議論したが、「思春期の運動部員が脱いだ靴の奥のほうの匂い」がもっとも近いのではないか、という結論になった。これを大豆に混ぜて、煮汁を加えながらこねる。

水粘土のごとく徹底的にこねていると、しだいに水気がなくなって、段々と、味噌らしい感じになってくる。これを団子状にして、空気を入れない様に保存容器に入れていく。この段階で舐めてみたが、まだ青臭い味で、味噌という感じはしない。これから暗い場所に1年ほど置くことで、味噌になっていくという。

この日は14時に集合したが、完成したのは20時半すぎと、およそ6時間かかってしまった。しかしこれだけ労力をかけると、豆腐とおからだけでも、十分においしさを噛み締めることができる。ビールがいつもより美味しい。味噌に関しては、やはり完成は一年後ということで、この日、出来上がったという感慨は沸かなかった。とはいうものの、「こうやって味噌というのはできていくのか!」というところで、知的好奇心は大いに満たされたと思う。これから長い間、カビが生えない様に手入れをして、完成を見届けよう。

しかし、なんという贅沢なあそびだろう。贅沢さというのも、いろいろ尺度はあると思うのだけれど、最近は季節のあそびができることに、それを感じる。楽しい一日になった。

つづき:手作り味噌の味見