バイス
いつもお世話になっているコメディライターの須田さんが、『酒とつまみ』という雑誌の編集者の方と浅草橋の立ち飲み屋を巡るというので、僕は誘われるまま、金魚のふんのように引っ付いていきました。
僕の地元である、溝の口の西口商店街にも立ち飲み屋がいくつかあるのですが、実際に立ち飲み屋に入るのは初めてです。やっぱり、入りづらいですよね。
当たり前の話なんだろうけれど、立ち飲み屋ってのは、みんな立ってるんですね。
カウンターに立ってるイメージはあったんだけれど、サイドのテーブルのお客さんも、みんな立っているんだなぁと。
そうだったら、テーブルの高さもスタンディング用にしたらいいのに、それはやっぱり椅子用の高さになっている。不自然というか、何か気になったのはそれが原因だったのでしょう。
でもそういう「気遣いの無さ」が全体的に散見されるところが、僕にとっては、なんだかとてもチャーミングです。ひとつひとつのこだわりの無さが唯一のこだわり、死守したいラインなんだな、と感じました。お酒は平均300円、おつまみは150円以下と、値段も実に景気が良い。
そう考えると表参道あたりの、インテリアにこだわりのありすぎるカッフェでコーヒー750円、なんて言われると、ちょっと息苦しくも感じてくる。比較対象にするのも変だけれど。
「にんにくのたまり漬け」がおいしいなあと思っていたら、腕をかけていたカウンターの下に「プロ仕様 にんにくのたまり漬け」と書かれた未開封の袋が いかにも適当に置いてあった。そんなところも、またチャーミングです。
もう一つ気になったのは、「加賀屋」というお店に置いてあった「バイス」というお酒です。
たかだか24歳とはいっても、飲み屋には割と行っているほうだと思うんですが、バイス、その名前、聞いたことなかったです。
ためしに”バイス”と検索してみたんですが、出てきません。そこで瓶に書いてあった”コダマ”の文字を手がかりに、株式会社コダマ飲料のページを発見しました。
実にシンプルで 好感のもてるページです。
ビアサワーが薄口しょうゆみたいなボトルに入ってるのも良いし、海洋深層水のボトルが砂浜の上で波にさらされてる写真も最高です。それが”深層水”だということに一切気を配ってないのが良いです。アクセスカウンターのサイケなフォントも良いですね。
しかしバイスはバイス、とだけ書かれていてなんのフォローもありません。
いちおう味は、しそサワーといったところでしょうか。焼酎で割ると、しそ焼酎が甘酸っぱくなったみたいな味がします。あるいはしそ味の駄菓子の味です。何故「バイス」なんでしょうか。まさか梅酢…? いやいや、きっともっと奥深い由来があるはずです。
加賀屋でバイスを頼むと、ジョッキに3分の2くらい焼酎が注がれていて、一緒にバイスの瓶が出てきます。いわゆるホッピーと同じ出かたです。値段は300円。
僕はよく分からなかったのでバイスを一瓶全部ジョッキに入れたのですが、
加賀屋のおばさんに
「ああ半分ずつだよ。全部入れるなんて金持ちだね、アンタ」
と言われてしまいました。300円のバイスを一気に入れただけで金持ちと罵られるなんて…大変な過ちを犯してしまったのでしょう。僕が間違っていたんだと思います。
しかしこのバイスですが、想像以上においしい!
なんでほかの居酒屋に置いてないのか、不思議なくらいです。個人的に手に入るんなら、セットで欲しい。そしてバイスパーティを開きたいくらいです。コダマ飲料のWEBショップでは何故か売ってないし。どうやって買うんだろうか…。
とにかく浅草橋、初めて行った場所でしたが、まだまだ奥が深そうです。個人的にも追求してみる必要がありそうです。