TYPE FROM LONDON
表参道のPaul Smith SPACE GALLERYで「TYPE FROM LONDON」という展覧会へ行きました。
「デザイナーのアートワークの展示」というのは、あんまりちゃんと見たことがなかったのです。デザインの展示と聞いて行ってみると、どこかの地方のまんじゅうの包み紙(おしゃれ)とか、妙にコンセプチュアルな家電商品とか、そういう企業ベースっぽい展覧会は何度も見たことがあるのですが。
商業から離れたところで、純粋に個人の興味や好奇心から生まれた、タイプフェイスで遊ぶとか、活版で色々やってみるとか、そういう作品が集まっているのを見る機会が本当に少ないので、とても刺激的でした。もう単純に、器用な人の砂場遊びみたいな感じ。良い意味で気負いがないというか。楽しそうだなと思いました。
会社でデザインのお仕事を頼まれたときに、紙の種類を営業さんが決めてしまったり、フォントの種類や級数、使用する色などを代理店が勝手に決めたりetc…ということがそれなりの頻度で起こります。何か違うなぁと思うのですが、やはりそれらは、デザイナーがデザインする領域に土足で入って来られたという違和感なのかなぁと思いました。文字を選ぶ、紙や印刷手法を選ぶ、適切なレイアウト、配置。視覚的な導線や全体的印象を踏まえた色の指定などなど、ひとつひとつが、熟練したプロの作業であるということを、今回の展示で強く感じました。
同時に、デザイナーは、自分たちはそういうことのプロなんだという宣言とともに、自分の作品を発表していくことはとても大事なのだなと思いました。やはりデザインは基本的には「頼まれて、制作する」という形で、相手ありきの部分は当然あると思うのですが、同時にクリエイティブな領域の下にある以上は、ある程度は自己表現の場もないと、そのデザイナーの内的なバランスがおかしくなるように感じます。むしろ、その自己表現の経験が、うまいこと「良い仕事」に繋がっていくという循環が生まれたら一番良いなと思います。実際今回のデザイナーさんは皆、その好循環の中に自らを置かれている方が多かったのではないかと思いました。