昨年、姉が亡くなりました。残念ながら自死ということでした。あれから一年ちょっと経ちました。一年で何か変わるかなと思いましたが何も変わりません。僕はおそらくこの事態に正面から立ち向かうことを避けてきました。今現在も避け続けています。
僕と姉だけが共有する体験というものがあります。それは小さい頃から色々ありますが、大人になってからもそんな話を持ち出すと二人で笑ったりしたものです。それらがどうして笑えるのかは、正しいところは僕と姉でしか分からないと思います。しかし今やそれらは、僕がいくら嘘をついても良いものになりました。つまり二人で体験した事実に関して、その都度その事実を担保してくれる存在はもういないわけです。僕がその事実を少し曲げて、もっと皆んなが笑えるような面白い話にしたとしても、きっとだれも気づかないかもしれません。でも、それらが事実であったということが、一番面白いところなのです。それを姉と会うたびにしつこく確認し合う(そして笑う)というのがとても大切なことだったのです。
時間を見つけて、できれば一人きりで、広島に行きたいと思っています。転勤族で住まいを転々とした我が家でしたが、姉と僕は広島で子供時代の大切な時間を過ごしました。そこで姉弟で見た小さな景色をひとつひとつ確認していきたいと考えています。