keisukeoosato.net

2006.11.24 展覧会

コネクティング・ワールド展

ICCで行なわれている「コネクティング・ワールド」という展覧会に行った。

ICCはメディア・アートに特化しているので、見るほうも見やすい。展覧会の名前にどんな冠をつけたって、いつもだいたい同じような内容。でも今回は面白かった。

よかった作品2点。

■エキソニモという作家さんの「OBJECT B」。

これは四面スクリーンにそれぞれゲーム画面が出ていて、そのうち一面をプレイヤーが操作でき、残りの3面の前のコントローラーには何やらぐじゃぐじゃ機械がくっ付いている。プレイヤーがシューティングゲームをすると、そのアクションに反応して、ほかの機械が動き出すのだが、この動き方が馬鹿でよろしい。棒がものすごい勢いでキーボードを連打し始めたり、マウスを置いてあるボードがものすごい勢いで揺れたりする。その操作によってゲームが勝手に進行していって、それによって他の機械も反応したり、プレイヤー側の画面も変化したりする。

これは面白い。なんといっても、もうアホかってくらいに無感情に棒がキーボード突っつくのがおかしくてしょうがない。それが連鎖していきながら変化していくというのも実に面白い。1時間はハマッていられると思う。この機械による不器用な突っつきを見ていると、仮想空間での機械とのコミュニケーションってのは、ある意味こんな感じかもしれないなぁ、と思う。人間という偉大な装置の細やかさを感じさせられる。

■ペーター・フィッシュリ&デヴィッド・ヴァイスという人たちの『事の次第』。

87年作の、30分実験映像作品。
ICCに80年代の作品があるのが珍しい。けれど内容は錆びない面白さ。
基本はドミノを撮っているんだけれど、そのドミノというのが、バケツがひっくり返って、その中のものが落ちた重みで滑車が動き、その滑車がぶつかることで柱が崩れて上にあるものが動き出して…という感じで、一つの現象が、必ず次の現象に繋がっていく、というのを延々30分撮っている。要するにピタゴラスイッチみたいな感じである。

とりあえず、この壮大な装置を作ってしまった、という時間のかけかたに、とてつもない面白さを感じる。
ある意味タルコフスキーの『ノスタルジア』で、ろうそくを持って歩くおっさんをワンカメラで追っていくのにも、近いものを感じた。ノスタルジアのおっさんは歩くだけだけど、この作品では次々に予想不可能な大掛かりな装置が出てきて(しかも、ものすごく単純な仕組み)、次の装置に繋がっていくわけだから、見ていて飽きがこない。ある意味でコメディ作品を見ているような可笑しさもある。とっても滑稽なのである。何のためにこの巨大な装置が動き、終わることなく連鎖し続けているのか…それを考えるだけで、時間が過ぎる。この膨大な装置と丁寧な撮影から察するに、きっと彼等なりに何か意味があってやったんだろうと思えるのである。

当たり前のことだけれど、メディア・アート作品だから、すべてが面白いというわけではないと思う。当然、つまらない作品もある。何がつまらないかというと、放りっぱなしの作品がつまらなく思える。「ある装置(あるいは仕組み)を完成させる、おしまい。」という作品が、残念ながらある。装置の商品説明会みたいなのは、僕にはつまらなく感じる。

面白いかどうかは、そうした装置の面白さの次の展開がどうなっているか、が重要であると思う。やっぱりその装置がどこで、どのようなシチュエーションで、どのような人と関わって成り立っていて、何を考えさせるのか、etc…といった、まさに”コネクション”の部分が面白いのだと思う。

以前から、メディアアート作品の多くに感じられる”押しの弱さ”ってのは一体なんなのだろうと考えていたけれど、ある意味、作り手が機械や装置の仕組みに惑わされて、思想やコンセプトのようなものがおざなりになってしまっていたり、表現と言う点で気遣いが足りなかったり、というところなのかなと思った。そういう意味では今回の展覧会は気の利いた作品が多かったように感じた。

2006.8.18 展覧会

束芋展/デジグラフィ展

原美術館の束芋さんの展示を見に行った。束芋さんといえば、いまかなり旬な作家さん。かなり期待していったんだけど、やはり期待というのは大きすぎるといけない。もっと何も考えずに行くべきだった。

それでも「日本の台所」と、あと公衆便所の作品は秀逸だったなぁ。でもその秀逸さっていうのにも、レベルがある。たとえばジェームズ・タレルの作品を見て「秀逸だ!」というのと、友達の卒業制作作品を見て「秀逸だ!」というのは、全然違う。その意味では束芋さんの作品は後者の秀逸さだったと思う。

そうなってくると原美術館でひとり展覧会を開催するのは、少々早すぎたような気もする。大掛かりなインスタ以外の平面展示、コンテの展示などは特に見るべきものではなかったと思うし、会場を埋められなかったから、とりあえず何でもかんでも展示してみました、という印象すら受けた。そういう意味で物足りなさを感じてしまった。

つづいて、東京都写真美術館のデジグラフィ展に行った。ここでは最初のキャプションに「デジタルとアナログの二項対立でないデジグラフィをお楽しみください」と書いてあったが、実際の展示物はその二項対立を強く認識してしまうものばかりで、少々残念だった。(けど森村泰昌の作品は素晴らしかった!)だいたい「デジタルとアナログの二項対立でないデジグラフィ」ってのは、一体何なんだ。そこが最後までよく分からなかった。そういうことはICCのほうが上手くやってる気がした。

ついでに、会場隅に設置されていた「文化庁メディア芸術祭」の過去受賞作をだいたい見た。どれも面白そう、実際に展示に行って体験すればよかった、と思った。